えんぴつ

9月は心臓の検査で何度か病院に行きました。

検査の結果を聞きに行った時のことを書きます。


診察室の前で順番を待っていると

70代か80代くらいの女性を乗せた車いすを押して

50代くらいの男性が現れました。

その女性の名前が呼ばれたようで

診察室に 車いすの女性を入れ

中に一緒に入らないのは当然のように

男性は廊下の椅子(わたしの隣)に座りました。

ああ、男性はヘルパーさんかな?と思いました。

男性は なにかいらついている様子。


しばらくして診察が終わり

診察室のドアが開き

中の看護師さんが女性の車いすを

戻すかたちで押して女性は廊下に出てきました。


男性は車いすを出すのを手伝い 

二人は廊下の中央。


女性は小さな手帳を持ち

自分のバッグのなかに手をいれ

なにか探しているようでした。




か細い声で 男性に

「えんぴつ・・・えんぴつ・・・ないかね・・・」

と何度も言うのですが

「なに言ってるんか聞こえねんだよ。」

「わからねえよ。」

「うるせえよ。」


周りの人たちは男性の言葉に驚き

私 この二人の関係はなんだろうと

思いました。


病院のスタッフが出てきて

男性と話しはじめました。

聞こうと思わなくても聞こえてきて

二人は親子で

お母さんがなにかで入院し

退院をきっかけに男性の家に同居することになり

認知症もでてきて

慣れない介護で男性はどうしてよいかわからない様子でした。



女性は 医者に言われたことをメモしたかったようで

「えんぴつ・・・えんぴつ・・・ないかね・・・・」

と息子に言っているのです。


私 持っていたボールペンあげました。

男性は私の手を払うようにして

「いいんですよ、 かまわなくて。」

と言ったのですが

「わたし ペンたくさん持っているから。これ 貰いものですけど。」

と言って女性に渡しました。



女性と 私の母とかぶってきて

男性のいらいらが 母の介護を始めた時の自分のいらいらに

かぶってきて 胸が痛くなったよ。

私も 最初はこうだったんだよ。


この親子 わたし 応援したいと思った。

ボールペン1本だけど。




病院のスタッフが院内の介護相談室の案内を男性にして

二人は相談室のほうへ向かって行きました。





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